八碁連だより397号(11月号)

山形
台町囲碁同好会会長 菅井 勝男

 私が題材に選んだ【山形】は、芭蕉で有名な山寺、蔵王、銀山温泉等、風光明媚な山と温泉、寺院で知られる美しい自然に恵まれた地域です。この辺りをまだ現役のころ、たびたび時間をかけては訪れていて、第2の故郷の思いがあります。
自分の退役の頃には、時間の余裕も増え、この時間がもったいないなーと考えるようになり、人生訓にもなる、単行本でも読んでみようかと思いました。手にした本が【藤沢周平】の三屋清左衛門残日録でした。
 この藤沢周平の作品には、山形庄内藩(酒井忠次)の城下町として鶴岡(市)が登場するが、小説では庄内藩は、海坂藩と名前を変えていました。
庄内藩は、北西に鳥海山、南東に月山、真ん中に米どころ最上川、その中心が城主のいた鶴岡、その南側が藤沢周平が6男として生まれた金峰山があります。
この人の小説はこの海坂藩で起こった事件(陰謀等)の内容で、隠し剣孤影抄、三屋清左衛門残日禄、蝉しぐれ、義民が駆ける、たそがれ清兵衛などがあります。そして、これら小説の中で事件を解決して行きました。
小説の中で良くでてくるのが、藤沢周平の酒場の話です。周平(本人)は、よく酒場で飲み、庄内藩の酒造メーカーは18軒あるとされる中、操業3百年、料理の邪魔をしないと言われた原料が、幻の米、精米度合い55%の亀ノ尾です。小説を読むと意外と酒飲むシーンが多いことに気づきました。
明治になって、各地の藩主は東京に移り住みましたが、酒井家は鶴岡を離れることはなく、長い間領民に好かれたと言うことです。
 私がこの藤沢周平の本を買ったのには、もう一つ理由がありました。この本には、興味ある歴史の他に地元の作家として、郷土料理に詳しい事が描かれているからです。とは言え、私は友人とお店で飲む時、私からつまみをほとんど頼みません。何がおいしいのか、また、食べたいものの名前が言えない、また頼んでも多くを食べないからです。
 小説の中の鶴岡の小料理屋のときは、つまみは女将が選んでもってくる、そのほとんどが、赤カブ、ハタハタの湯上げ、細口カレイ、醤油の実、菊の酢の物、ゴマ豆腐の餡掛け、寒鱈のどんがら汁といったものです。これらの料理を海坂膳と言うらしいが、もったいなくも、飲む方と話が夢中になってしまうタイプなのでしょうか。又の機会にゆっくりと語らいながら、味わい、食べたいと思っています。
庄内藩では当時、一番うまいのは荘内コシヒカリと、誇りを持っていたと言います。藤沢周平が各種小説で、自分が、子供のころ食べた地元の食べ物を紹介したところ、海坂膳は有名になったという話があります。