八碁連だより396号(10月号)

八王子からの富士
石川囲碁同好会会長  石川 幌二

 今年は病気で一週間ほど入院した。外が見えない病室から出て家に戻った時、雪が消えかかった富士山を見ることが出来、ホットした気分になった。
 八王子から見える富士山は静岡県や山梨県から見ることが出来る、裾野から見える富士ではなく六合目付近より上の方が見えている。
富士山は季節によっていろいろな姿があり、春は雪が日々消えていく様子を、夏は湿度でよく見えない日が多いが地肌を見せ、秋の初冠雪からは白一色の雪景色となる。一寸足をのばすとダイヤモンド富士を見ることもできる。
日によっても朝日で輝いたり、夕陽で赤く染まったり様々な姿が見え、富士山の上にかかる雲はその日の天気も教えてくれる。八王子からは丹沢や奥多摩の山々の山並みが幾重にも重なり美しく見えるが、富士山はこれとは違い、美しさと存在感がある。
ある人は「世界各国に名山は多くあるが、富士山ほど一国を代表して国民の
精神的遺産となった山はない。」と言う。
 昔から富士山に関する小説や随筆が多く、絵画でも浮世絵、日本画、洋画と
有名な作品が多い。浮世絵などでは遠くから画いた小さな富士山にも名作がある。また信仰の山として五穀豊穣を祈り、広く昔から愛されている。
 最近は高齢になり気が重くなったり、思うように体が動かなくなったりすることが多い。そんな時、富士山を見ると元気を与えてもらえる様な気がする。