八碁連だより385号(11月号)

碁盤と碁石
長房囲碁同好会 池口 隆久

 乙媛旅館の主であったか、千人町に趣味で碁会所を開いていた鹿島さんから、榧の碁盤を貰った。話によると鹿島さんは榧の木を買い求め(4~5年間自然乾燥させたか、それは知らない)、碁盤をいくつか作らせたらしい。碁会所に碁盤がいくつか並んでいた。
 私は、1ヶ月分の給料をはたいて榧の碁盤を譲ってもらった。鹿島さんに教わった通り椿油を少ししみこませた布切れで乾拭きは怠らなかった。
兄の友人の大横町のたんす店に頼んで、桐板のカバーを造ってもらった。
 平成16年6月に、さる旅行会社のツアーに参加した。台風が予想されたが、旅行社は実施すると言う。やむなく出かけたが、実は台風の真っ只中に飛び込んだようなものだった。那智の滝は全く見えず、空から風呂桶をひっくり返したような雨が落ちてきていた。バスを降りて、熊野那智大社まで朱印を求めに行くのが、大ごとだった。結局神社へ参拝に出かけたのは私一人。バスから降りるのをためらう人が多かったくらいだから那智大社から戻る途中、参道沿いの店に並んでいた碁石(本那智黒36号)が気に入り、それを買い求めてきた。
 同じ旅行社のツアーで中国に行った時、万里の長城付近の店先で見た「メノウの碁石」がどうしても欲しくて、好奇心に駆られてやはり買ってしまった。那智黒・日向蛤のとはちがって、指になじみにくいが、宝石で遊んでいるつもりで盤上に並べている。碁石の表面に微妙な模様がうかび上がっており、なかなか味があってよろしい。
今では、ひとりで棋譜を並べるときはこの「メノウの石」にしている。